【要約・考察】『訂正する力』(著:東浩紀)からの言葉
自己啓発より穏やかで、哲学書よりも柔らかい。本書はそんな本である。それは人間の曖昧さと情けなさを許してくれるということだ。「ミス」に厳しい現代、この本は私たちの優柔不断な心のお守りのようなものだと思った。
ところで、私たちは自分の人生をどう評価できるだろうか。夢を抱いて、そこに向けて火の玉のように突き進む。そのような「完璧」とも「理想的」ともいえる人生を歩めている人は少ないと思う。「自己啓発」はそんな私たちに人生の「デザイン」を強いる。一方で「哲学」は隠された真実を暴き、本当の「原理」をもって私たちにユートピアの夢をみせる。この二つは「訂正」を許さない。そのことに私のような人間は落ち込んでしまう。「ああ、自分はなんて意思の弱い人間なんだ」と。本書は「反省」と「訂正」の連続である人生に「それでいい」と言ってくれる。そして、このことが「生きることを楽にしてくれる」と励ましてくれる。
私は本書が好きだ。「友だち」についても語ってくれているからだ。「豊かな人生を送るためには、自分の価値を「じつは……だった」というかたちで何度も再発見してくれる、「訂正するひとたち」が必要なのです」と。この存在を私は「友だち」だと思う。金曜日の夜、気心の知れた友人たちとの他愛のない時間は「生産性」のないものかもしれない。けれど、この時間を「豊か」だといわずに何と言おう。そのことに改めて気づかせてくれた。
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