【要約・考察】新書『〈私〉を取り戻す哲学』著:岩内 章太郎
SNSが普及した現代において〈私〉というものへのイメージは簡単に操作できる一方で、そのことが「途轍もない疲労感を生んでもいる」と本書は主張しています。それはSNSなどにより「みんなに追いていかれたくない、という漠然とした同調意識に支配されて、自分が何を欲しているのかを深く考えなくなっているから」だと。この結果として「情報に意味を与える〈私〉がいない」言い換えれば〈私〉のことが自分でさえわからなくなっている。
この主張を私は正しいと思いますが、読者はどう思うでしょうか。「自分探し」という言葉がありましたが、今ではあまり見受けられなくなった気がします。また「深く考えなくなっている」という指摘も〈私〉に関わることだけではなく、少なくともSNS上では様々な社会問題への意見についても同様のように思えてなりません。ただ、そんな疑問や違和感は、なかなか人に話しにくいものでもあります。下手をすれば「変わっている人」と見られかねません。
しかし本書の存在がそんな疑問は決して不自然なものではないということを示しているのだと私には思えます。そして、抱いた疑問への答えも本書は提示してくれています。疑問を肯定し〈私〉を再発見することで、自分にとって本当に大切なものは何なのかがわかる一冊です。
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