【オススメ本の紹介】「自分らしさ」で悩む君が読むべき3冊

様々な場面で「自分らしさ」が問われる時代だ。もしこれを学生が読んでいるのであれば、色々と思い当たる節があると思う。進路や将来の夢は言うまでもないし、SNSで輝かしい道を歩んでいる同世代の姿を見ては「自分に何ができるだろう」と焦燥感に駆られている人も少なくないのではないだろうか。
残念なことに、この悩みは大人になっても尽きることはない。「働き方」さえ、その気になれば自分で選べるようになってきているのだから。
この悩みに君はどうやって立ち向かうだろうか。友人や家族に相談するのも良いかもしれない。けれど「そんな恥ずかしいこと」と言葉を飲むかもしれないし、親だって「そんなことで悩む暇があるなら勉強しろ」と言うかもしれない。
そんなとき、本という無口な友人が、案外、君を助けたりしてくれる。少なくとも私はそうだった。本文ではそんな私が胸を張って「自分らしさ」で悩んでいる君たちにオススメできる本を紹介したい

『<私>を取り戻す哲学』

「哲学」という堅苦しい言葉に、君はとても驚いているかもしれない。けれど「自分らしさ」という悩みは平凡なようで、実は大人でさえ「哲学」なんていう言葉を持ち出さなければならないほどに、一筋縄ではいかない荘厳な悩みなのだ。
さて、ここでオススメしている「<私>を取り戻す哲学」だけれど、これは悩みを解決するための準備運動になる。
そもそも考えてみてほしい。「自分らしさ」で悩むということは「自分を見失っている」ということだ。本書は、どうして「自分を見失ってしまったのか」という問題を、昨今のSNSの影響を踏まえて解決を試みている。人間という生き物は、案外、外からの影響を受けやすい。ショート動画をぼんやりと眺めているうちに、いつの間にか長い時間を過ごしてしまったという経験は多くの人にあると思う。そんなとき、私たちは「私」について考えることを奪われているのだ。いつの間にか奪われた「私」や「自分らしさ」ということに気づいたとき、私たちは「「自分らしさ」で悩んでしまう。本書は、「私」が奪われることの原因やそれによる悪影響を理論立てて説明してくる。「自分らしさ」という悩みを解決するための、最初の一冊として、これほど適切なものはない。

『友だち地獄』

もしかしたら君はとても優しい心の持ち主かもしれない。そんな君が「自分らしさ」で悩むのは友人に合わせて、空気を読みすぎているせいなのかもしれない。この想像に心当たりがある人は、ぜひ本書を読んでほしい。君の悩みの根本原因はそんな友人関係にあるのかもしれない。そして、その悩みが君の素質に由来するのと同時に、私たちが生きている「社会」によって作り上げられたものだとすればどう思うだろう。言い方を変えれば、君の悩みは「社会」によってもたらされた、という見方だ。もちろん「社会のせいにして、何かが解決するのか」というストイックな考えもできるだろう。それはそうかもしれない。けれど、悩むほどに苦しんでいるのであれば、その抱えているものを一度降ろして、ゆっくり考えてみても良いんじゃないか、と私は思う。
本書は「友人関係」による苦しさを一心に受け、生き抜いた少女の手記とケータイ小説を手がかりに、君の苦しみを解消するための手がかりを与えてくれる。
一つ前の本に比べると古いものであることは間違いないけれど、それでもこの本の分析が無意味になるわけではないし、今でも読むべき人がいるはずだと私は強く信じている

『14歳からの社会学』

この本は、君を慰めない。けれど、ここまでで君の悩みの原因がハッキリしたのであれば、本書に手を伸ばすべきだ。これは君が「自分らしく」生きるための指南書となる。「友情」「恋愛」「将来の夢」や「仕事」など、あらゆることに対しての「社会学的な分析を行なった後、指針を示してくれる。この指針がとても大事なのだ。
ここで賢明な君なら気づいてしまうかもしれない。「誰かの指針に沿って生きることが「自分らしさ」なのか」と。ごもっともな指摘だ。けれど、本書は君の「情熱」だったり「自由」を尊重してくれる。特定の考えやイデオロギーを君に押し付けたりはしないから、安心してほしい。一度読んでみて、内容が気に入らなければ、途中でやめればいいだけだ。本よりも、魅力的な大人が近くにいて「こんな人になりたい」と思えば、それを目指せばいい。
先回りして言えば、本書は君のそんな行動を応援しているのだから。詳しいことは「14歳からの社会学」自体に譲るけれど、この本の核となっていると思われるメッセージだけは伝えておきたい。「傷つくことを恐れるな」。直接的にはそういっていないけれど、そんなメッセージが込められている反時代的だが、素晴らしい本だ。