【名言・考察】『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の名言
「これからは~の時代」という文言を見かける回数は多くなったと思う。要するに「社会は変わる/を変えたい」という欲望の表れだ。でも大人たちは「現実」というやつから「変われないこと」を教わりすぎた。この「僕は僕だけがたまたま知りえた情報の確認と伝播を自身の使命と錯覚し、奔走した」というセリフはどうだろうか。「錯覚し、奔走した」という部分に大人になってしまったことへの寂しさと気楽さを感じる。
先のセリフはテレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の重要キャラクターが口にしたものだが、そのキャラも「社会を変えたい」と思い、動いた過去がある。大人に対して高潔であれと迫り、正義は拡散されると信じていた。しかし名作『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で描かれている「社会」は、単純ではなかった。浅ましい野心や保身、利権のひしめき合いは青臭い理想の存在を許さない。この理想と現実のせめぎあいがどのような結末を迎えるのかは、ぜひ本編で確認してほしい。
「錯覚し、奔走」することもできなくなった私たちは代わりに「社会」なるものの複雑さを知ると同時に多様であることにも気づいたはずなのだ。単純に思えた「社会」は、それぞれが好奇心をもとにかけがえのない「個」として存在する。その集合体を「社会」というのだと。そして、その「好奇心」が思わぬ変革の火種となる。このことを『攻殻機動隊』はこのことを示しているし、実は「大人」も知っていることなのだと最後に付け加えておきたい。