【あらすじ・感想】 呉勝浩『爆弾』―読者1000人に聞いてみたスリリングな展開とキャラクター描写を徹底分析

【あらすじ・感想】 呉勝浩『爆弾』―読者1000人に聞いてみたスリリングな展開とキャラクター描写を徹底分析

『爆弾』に対する読者の感想

呉勝浩氏の小説『爆弾』は、スリリングな展開と意外な結末が魅力のミステリー作品として、多くの読者に楽しまれている。本作の幕開けは衝撃的なシーンからだ。自称スズキタゴサクという男が警察に「十時に爆発があります」と予告し、実際に秋葉原で爆発が起こるのだ。読者は、この予測不能なストーリーに引き込まれ、最後まで飽きることなく読み進められると感じている。本稿では、本作に寄せられた読者の感想を、三つの視点から整理して紹介したい。


1. 物語の魅力とスリリングな展開

多くの読者が本作の物語の設定が面白いと評価している。特に、印象的なのは、取調室でのスズキタゴサクと警察官の駆け引きは、知的な戦いが繰り広げられる場面だ。読者の評価としては、『爆弾』はただのサスペンス小説ではなく、心理戦を描いた作品としても楽しめるとの意見が目立った。確かに次のタゴサクと刑事やりとりなどからも、スリリングな心理戦が垣間見れる。タゴサクは刑事に向かって言う。


「バイクに爆弾があったんですか? まさかわたしが仕掛けたと?」

「違うんですか?」

「憶えてません。だけど、おかしくないですか? 朝の七時に下見して、それからいつ仕掛けるんです?(…)刑事さんの話だと、わたしは川崎にいたんですよね?」


アリバイ崩しを図る刑事と、崩させないタゴサク。なにが嘘で、なにが本当なのか。ブラフか、ハッタリか。緊迫感あふれる描写が『爆弾』には、これでもかというほど盛り込まれている

また、テンポの良い文章ハラハラする展開も本作の大きな魅力と感じる読者も少なくなかった。事件の発端から緊迫感のあるシーンが続き、次に何が起こるのか分からないスリルが読者を惹きつける。特に、「爆発が起こるのか、どのような形で物語が進んでいくのか」といった緊張感の持続が評価されており、読み始めたら止まらなくなるという感想も多く見られた。

たしかにタゴサクは、前述したように爆破時刻を予告する。そしてまるで警察をからかうように、爆弾を置いた場所のヒントを与えるのだ。その謎を解くのもよし、翻弄される警察の人間ドラマを楽しむことだって出来る。

一方で、一部の読者からは「過去のサスペンス映画と似た展開で、結末が予想できた」という意見もある。しかし、一方で物語が二転三転し、警察内部のドラマも絡み合うことで単純な展開にはならないと感じており、その点が高く評価されていることも無視できないだろう。


2. キャラクターの描写と心理描写

キャラクターの描写について賛否が分かれる意見が寄せられていることにも注目したい。一部の読者は「登場人物の描写が浅く、感情移入しにくい」と感じており、特に主人公や警察官の心理描写が物足りないという指摘をしている。また、スズキタゴサクのキャラクターに関しても、「ミステリアスな存在ではあるが、もう少し背景が描かれていればさらに楽しめた」という鋭い意見があった。

確かにスズキタゴサクはミステリアスな人物だ。いや、不気味というべきだろうか。印象的な点は次の個所だろう。翻弄される警察の怒りを受け、タゴサクは言う。


「これなんですよ刑事さん。わたしがほしかったもの。わたしの望み。このお嬢さんがくれました。極上のそれをくれました。怒り、憎しみ、殺意です。(…)心から破壊を望まれること。それはもう、ほとんど愛です」


だが、「登場人物の心情が丁寧に描かれており、情景が目に浮かぶ」と評価する読者も少なくない。特に、スズキタゴサクと警察官とのやり取りや、刑事たちの葛藤がリアルに描かれている点を評価する声が多い。心理描写に関しても、「独特な描写が作品の深みを増している」と好意的に捉える読者もおり、この点は個々の読書体験によって印象が異なるとみていいだろう。

また、作品全体の雰囲気として「重厚感がある」と感じる読者もいれば、「もう少しシンプルなストーリーにしても良かったのでは」という意見もあり、キャラクター描写や心理描写に関してはさまざまな見解があったことは書き添えておきたい。


3. 小説としての評価と総評

『爆弾』は、犯罪者と刑事の知的な駆け引き、スリリングなストーリー展開、そして人間の心理を深く描いた作品として、多くの読者に強い印象を与えている。特に、テンポの良さとスリル感、緊迫感のあるストーリーが高く評価されていた。

ただし、「冗長な部分がある」「無駄な描写が多い」と感じる読者もおり、ストーリーの構成については意見が分かれた。それでも、総評としては「最後まで一気に読ませる力がある作品」として捉えてもいいだろう。

全体として、『爆弾』はスリルを求める読者にとって満足度の高い作品であり、サスペンス好きにはぜひ一読をおすすめしたい小説といえる。

4. 記事編集後記

読者の感想をまとめる前に、私自身も本書を手に取ってみた。スズキタゴサクはいわゆる「無敵の人」に分類されるキャラクターであり、このことから現代社会の善悪について考えさせられる内容となっている

一方で既視感があるという指摘にはやや肯定する部分もあるが、爆弾の解除をめぐるストーリーなどは映画であれば古くは『ジャガーノート』『スピード』『交渉人・真下正義』など、もはや一つのジャンルといえるほどの作品群があるので、あまり気にしないでいいのかもしれないというのが正直な感想だ。

だが、評価がわかれるという感想については同意だ。「無敵の人」が、あまりにも「キャラクター」っぽくなっていることは否めない。しかし、世間からみる「無敵の人」というのは、もはや「キャラクター」なのかもしれない。そう考えると、やはり『爆弾』が問いかけるメッセージは非常に重厚だと言えるのだろう。