【歌詞考察】DECO*27『ラビットホール』純愛への憧れと怖さが滲む。ポップな歌詞の深層を徹底考察

【歌詞考察】DECO*27『ラビットホール』

純愛への憧れと怖さが滲む。ポップな歌詞の深層を徹底考察

DECO*27が作詞・作曲を手掛けたボカロ曲『ラビットホール』は、ポップで軽快な曲調に心奪われがちだが、実は、純愛に対する憧れを持ちながらも、それを素直に受け入れられない斜に構えた態度が描かれている。

本論ではそのことを歌詞の意味から読み解いていくと同時に、その態度が、曲中でどのような結末を迎えるのか考察していきたい。

まず「純愛に対する憧れ」についていえば、「厭々愛して死にたくなって」というフレーズに注目すべきだろう。

「愛して死にたくなって」という部分には、恋愛が実らなかったこと過去があることを想起させる。ここで重要なのは「厭々」というフレーズだ。

これはどういう意味だろう。思うに、これはつらい現実から逃避するための自己正当化ではないだろうか。つまり「いや、あれは本気じゃなかったし」という自己正当化というわけだ。

「死ぬまでピュアピュアやってんのん」と人を食ったような語り口が印象的な曲だが、肝心の「あたし」の恋愛の傷はすべて癒えていない。正面から向き合えていない。

繰り返しになってしまうが、このように愛に対して憧れを抱く一方で、純粋な感情を否定しようとする姿勢が、この楽曲の重要なテーマの一つといえるだろう。

ここで改めて曲全体を俯瞰してみたい。この曲はタイトルもそうであるように「ラビットホール＝穴」というモチーフが繰り返し登場する。

素直に考えれば、このことは物語『不思議の国のアリス』における異世界への入口と関連付けることができるのではないだろうか。転じて、本曲においては、傷ついた心や自己の内面へと沈んでいく感覚を象徴している。

この穴に向き合うことは、自分の痛みを受け入れ、乗り越えようとする過程を示しているのではないだろうか。

では、この「乗り越え」は歌詞のどの部分に表現されているのだろうか。

結論をいえば、それは本曲のクライマックスであり、そこに自身の傷に対して誠実に向き合うことが示唆されている。

本曲の最後には、「もっとこの穴を愛してよ」という印象的なフレーズが登場する。

前述の文脈でいえば「穴」は「傷」と解釈しても不自然ではないだろう。

したがって、この表現には、傷ついた自分を愛してほしい、認めてほしいという本音が込められているように感じる。しかし、その直後に「だっせ」と続くことで、自分自身を奮い立たせる意図があることがわかる。

これは、「傷」によって同情を求める弱さを否定し、より積極的に自分を奮い立たせようとする心理が表現されているのだ。しかし、それではあまりにも自己完結で独りよがりな考えだともいえる。

では「あたし」はどのような行動を選択したのか。「あたし」の結末を歌詞から考えなければならない。

本曲の最後には「やあやあやあやあ悪い子さん」という歌詞があるが、これは過去に愛した人との再会を示唆しているのだろう。

「自分を傷つけた人＝悪い子」というわけだ。しかし、心の底から「悪い子」と思っているわけではない。

特に「まあまあまあまあお愛顧じゃん」という言葉が、そのことを表している。

過去の未熟さや至らなさを自覚しつつも、それに対して執着するのではなく、一定の距離を置いて振り返る冷静さをにじませている部分だ。

また、一般的な「お相子」ではなく「お愛顧」というふうに「愛」が含まれている点も注目したい。この「愛」の文字が「向き合っている人物」＝「悪い子」が「かつて好きになった相手」という形で結びつく。

さらにいえば、そのあとの「さあさあさあさあ始めるよ」の意味についても、前述のように一度距離を置くことで、過去の出来事や感情を整理し、当時の未熟さも後悔も反省することで、改めて始めようとしていることがわかる。

「あたし」の口からは、もう「死ぬまでピュアピュアやってんのん」と斜に構えた言葉は出てこない。代わりに現れるのは、「傷」で同情を買うような真似を「だっせ」を吐き捨てる真摯な姿勢なのだ。

こうしたフレーズを通じて、『ラビットホール』は単なる恋愛ソングではなく、過去の自分や経験と向き合う姿勢を描いた楽曲であることがわかる。

最初は純愛を信じられずに斜に構えていた主人公が、葛藤を経て、最終的には過去を受け入れる方向へと向かっていく。そうした心理的な変遷が、歌詞の随所に表れているのではないだろうか。

『ラビットホール』は、まずポップな曲調の裏に、純愛への憧れと、それに対する斜に構えた心情を描いた楽曲でもある。

つまりそれは、傷ついた過去を持つがゆえに、愛を素直に受け入れることができず、どこか冷めた視点で自己を正当化する。

しかし、歌詞の中で繰り広げられる葛藤を通じて、徐々に自分の傷と向き合い、最終的には過去の恋愛に折り合いをつけていく過程が描かれているのだ。

単なる恋愛の歌ではなく、人間の成長や自己受容のテーマを内包した奥深い作品といえるだろ

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