カテゴリー: 歌詞考察
【歌詞考察】挫折P『存在証明』
名指されない声のために あなたが『存在証明』の歌詞に惹かれるのは、語り手の声がどこまでも“届かないこと”を知りながら、それでも差し出されていると気づいてしまったからかもしれない。誰かを救いたくて、ただそばにいたくて、ほんの数センチの距離に心が滲んでいるのに、それを言葉にするにはあまりにも世界が冷たく、慎ましすぎる。 この曲の語り手は「救いたい」と叫んでいるわ
【歌詞考察】椎名林檎『本能』
抑圧の臨界に触れる声 あなたが椎名林檎『本能』の歌詞に惹かれるのは、それが単なる衝動の開放ではないと知っているからだろう。この歌に響くのは、「欲しい」と叫ぶ声ではなく、「これ以上、押さえていたくない」という逸脱寸前のうめき声だ。社会的な役割、正しさ、優しさ──そうした皮膚を一枚ずつ剥ぎ取った先に残った、生の表面。『本能』はそこに指を置いている。 「約束は要ら
【歌詞考察】GLAMOROUS SKY
意味のない疾走に名前をつけるために あなたが『GLAMOROUS SKY』の歌詞に惹かれるのは、きっとそこに「壊れてもいい」と願ったことのある自分を見出してしまったからだ。この曲が語るのは、勝利でも再生でもない。むしろ、絶望の中に身を投じ、それでも空を見上げてしまう癖のような希望だ。 「繰り返す日々に何の意味があるの?」という叫びには、現状への飽和だけでなく
【歌詞考察】サカナクション『怪獣』
叫びは届かなくても、声にはなる あなたがサカナクション『怪獣』に惹かれるのは、それがただの哲学的言語遊戯ではなく、説明できなかった孤独に名前を与えるような歌だからではないだろうか。 この歌は語らない。むしろ、語りたくなかったことの輪郭を、そっと撫でていく。言葉の内側に沈んだ「秘密」や「知識」は、誰にも渡されることなく、ただ“夜の怪獣”としてそこに残る。 それ
【歌詞考察】なとり『DRESSING ROOM』
「真似できないスピード」に、誰も追いつけない夜 あなたがこの曲に引き寄せられたのは、言葉にする前にすべてがすり減ってしまうような夜を知っているからかもしれない。なとり『DRESSING ROOM』が描くのは、冷めきった街と感情の中で、それでもどこか踊り続けてしまう“誰か”の実存だ。 〈細胞単位で踊りたい〉と始まるこの歌は、すべてを突き抜けるような衝動と、それ
【歌詞考察】ツミキ『フォニイ』
2020年代のサブカルチャーには、“物語の後”の世界観が色濃く漂っている。恋愛、青春、家族といった価値を一度は信じ、裏切られたあとの「残骸」――そこに立ち尽くす人々の感情を描くこの傾向を、ここでは仮に「アフター系」と呼ぶ。 アフター系とは、成長や救済のドラマを否定し、その“不在”と共に生きる感覚である。この文脈において、ボカロ曲『フォニイ』は、その中心に咲く
【歌詞考察】ぽわぽわP『少女A』
導入──なぜ今、『少女A』なのか? 2020年代以降、ネット文化とともに成熟してきたボカロ楽曲群は、その言葉の不安定さや“個”への執着を、より内省的な形式で表現するようになった。ぽわぽわPによる『少女A』もまた、そうした系譜の中にある。反復される寒さ、遠さ、怖さといった感覚語は、感情が過剰であるがゆえに表現しきれない“距離”そのものを暴露している。なぜ今、こ
【歌詞考察】バルーン『シャルル』
——成長も関係も否定された後に残るもの バルーンによる《シャルル》は、2016年に発表されたボカロ楽曲である。疾走感のあるメロディと繰り返される別れの情景が、多くの人々の共感を呼び、現在も広く聴かれている。しかし、この楽曲が提示するのは、単なる恋愛の失敗や感傷ではない。そこに描かれているのは、関係の終焉というより、関係の不成立のような不在の手触りであり、感情
【歌詞考察】稲葉曇『ラグトレイン』
『ラグトレイン』は、稲葉曇(いなばくもり)が手掛けるボカロPとしての代表作のひとつであり、歌愛ユキを使用した楽曲である。この曲は2021年9月5日にリリースされ、独特のメロディと切ない歌詞で多くのリスナーの心をつかんだ。本論では歌詞の意味を考察しながら、この曲に秘められたメッセージを読み解いていきたい。 失くした言葉を探す旅 まず注目してほしいことがある。『
【歌詞考察】ヨルシカ『ただ君に晴れ』
2018年5月4日にリリースされヨルシカによる楽曲「ただ君に晴れ」。この曲は、ボカロPとして知られるn-bunaによる作曲を、ボーカルのsuisが透明感あふれる声で歌い上げる。発表から数年が経過した今も、人気の歌だ。歌詞は、過去の思い出に対する切なさが表現されており、「僕」が「君」との思い出を手放せずにいる様子が描かれている。 しかし、この曲の真価はこのよう