カテゴリー: 学術・評論
【要約・考察】『実況中継・社会学』
これから紹介する『実況中継・社会学』という本は冒頭で次のように書いている。「それがいまやテレビで「時事批評」する人たちだれもかれもが自称・他称にかかわらず社会学者と呼ばれ(…)ググってみたところ、経歴的にも議論の構成に関しても社会学とはまったく縁のないかたであることがわかり、びっくりしたことがありました」。このように「社会学者」の乱発があるせいだろうか。一部
【要約・考察】『訂正する力』(著:東浩紀)からの言葉
自己啓発より穏やかで、哲学書よりも柔らかい。本書はそんな本である。それは人間の曖昧さと情けなさを許してくれるということだ。「ミス」に厳しい現代、この本は 私たちの優柔不断な心のお守りのようなものだ と思った。 ところで、私たちは自分の人生をどう評価できるだろうか。夢を抱いて、そこに向けて火の玉のように突き進む。そのような「完璧」とも「理想的」ともいえる人生を
【要約・考察】新書『〈私〉を取り戻す哲学』著:岩内 章太郎
SNSが普及した現代において〈私〉というものへのイメージは簡単に操作できる一方で、そのことが「途轍もない疲労感を生んでもいる」と本書は主張しています。それはSNSなどにより「みんなに追いていかれたくない、という漠然とした同調意識に支配されて、自分が何を欲しているのかを深く考えなくなっているから」だと。この結果として「情報に意味を与える〈私〉がいない」言い換え
経済学者・熊沢誠の言葉
「心理的安全性」「ウィルビーイング」という言葉が経営や職場の環境改善という文脈で登場するようになった。その背景には、 労働環境の悪化や止まらぬ能力開発・自己啓発による働き手の「燃え尽き」などがあることは容易に想像ができる 。このような現状に対する分析、そして本文のサムネイルで紹介した「仕事・なかま関係を大切にすることを労働者の「心の自治」」というようなアイデ
【要約・考察】『現代社会はどこに向かうか』から「幸せ」を考える。
アニメ映画『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞アニメ映画賞を受賞した。しかし、考えてみると日本を代表する映画監督が現代に放った作品のタイトルが「どう生きるか」というのは意味深な出来事でもある。つい先日、日本のGDPがドイツに抜かれたということも騒ぎになったが、いよいよもって「経済」という明快な「幸せ」の基準が揺らぎ、「幸せ」を再考すべきというサインであり「
【要約・考察】『人間はどこまで家畜か』現代への「疑念」を提示する渾身の一冊
世界や社会に対する個人の姿勢を分類するのであれば「肯定」「否定」の間に「静観」「懐疑」があると思う。 そして本書は「懐疑」の本である 。本書は「自己家畜化」というキーワードを武器に「ADHD」や「社交不安症」の増加の謎にメスを入れ、その背景にある「生物」としての人間、そして社会構造の変化を分析する。もし今、本論の読者が「健康志向」の風潮や「コスパの良い人生」
【要約・考察】『世界は経営でできている』人生の経営者になるための必読本
告白すれば「経営学」について私は良いイメージがなかった。冷徹な合理主義、搾取のノウハウの蓄積という印象が先行しているからだ。しかし本書は違う。「本来の経営は失われ、その代わりに、他者を出し抜き、だまし、利用し、搾取する、刹那的で、利己主義の、俗悪な何かが世に蔓延っている」と宣言する。この本が語る「経営」とは他者と自分を同時に幸せにするという「価値創造」だ。し
【コラム】ド文系が結城浩の『数学ガール』を読んでみた
「数学が出来たらカッコイイな」と思ったことはないだろうか。そんな衝動を持ったまま手に取ったのが結城浩の『数学ガール』という本だ。とはいえ、タイトルのとおりド文系である自分がきちんと読めるかは自信がなかったし、読了した今でも十全に理解できるとは思っていない。ただ、それでも、楽しい読書体験だったということは、ぜひ共有したいのだ。これこそが本文の結論だけれど、 そ
【要約・感想】『非モテの品格』男らしさの呪縛を解く優しさが宿る魂の一冊
言葉にならない不安や絶望、それらを誰かに伝えるため、人文の世界は存在する。杉田俊介『非モテの品格』という本は、そんな試みの本だと思う。本書は三章で構成されており、一章は男にとっての「弱さ」という問題提起を行う。第二章は男にとっての「弱さ」という角度から恋愛や性愛の問題に取り掛かる。そこでは、この問題を「個人の運不運や自助努力の問題としてのみ考えずに、社会や制
【要約・感想】『メンタル脳』「やりすぎ」な脳との幸福な付き合い方
不安という感情や記憶、あるいはそもそも心というものが、なんのために存在するのか。そんな考えたことないような疑問に「脳」の仕組みという視点から答え、 それを踏まえた上で良質なライフハックを私たちに提供してくれるのがアンデシュ・ハンセン『メンタル脳』だ 。十代向けに書かれたという本書の構成は実にシンプルであり、内容としても二十代、三十代、あるいはそれ以上の年代に