投稿者: k-sato
【歌詞考察】柊マグネタイト『テトリス』
生きづらさという便利な言葉があるが、その核心を掴むことは難しい。だが僅かな兆候に目を光らせ、耳を澄ませることで苦しみの根源に触れることができる。柊マグネタイト『テトリス』という曲は、そのポップな曲調とは裏腹に、現代を生きることの困難が刻まれている。本論は『テトリス』の難解な歌詞の意味を考察することで、その「困難」を解読していくことを試みていく。 『テトリス』
【歌詞考察】なとり『Overdose』
もはや「解釈」というものは不要なのかもしれない。スマホを開けば簡単に「正解」が見つかる現代において正解がない「解釈」という行為は、多くの人に忌避される行為となってしまったかのように思う。 しかし、人の心を推し量ることは、どうしても私たちの生活にまとわりついてくる。例えば誰かを好きになったとき、相手の心を知ろうとして些細な行為や言葉を「解釈」してしまう。そのも
【歌詞考察】Chinozo『グッバイ宣言』
僕らにとって「正義」や「悪」とは何か 。ボカロP・Chinozoの楽曲『グッバイ宣言』の「引き籠り絶対ジャスティス」という歌詞からは、そんなことを考えさせられてしまう。 ここでは、現代社会を分析する専門的な知見を用いて『グッバイ宣言」の歌詞をなぞりながら、この曲がなぜ人気なのか、流行った理由とは何かについて考察していきたい。 この曲に惹きつけられる人や気にな
【歌詞考察】メル『さよなら、花泥棒さん』
全ての恋が「綺麗」なわけではない。「普通」の付き合い方がわからない人もいる 。これら「綺麗」や「普通」を定義することは難しいけれど、例えば、何かしらの罪のように、人に言えないことを共有してしまうことや、終わりがあらかじめわかってしまっていること、死の予感が常に漂っている恋は、多分「普通」ではないし「綺麗」でもないだろう。でも、そういう毒々しい恋は、いつの時代
【歌詞考察】吉田夜世『オーバーライド』の魅力
自分の本心を曝け出せる時間は、人生においてどの程度あるだろう。同時に、自分のことを言葉以外のところから汲み取ってくれる人との奇跡のような出会いは、どの程度あるのだろう。YoutubeやTikitokなど、様々な動画投稿サイトで流れる曲、吉田夜世『オーバーライド』も、実はそんな要素が含まれると考えることができるとすれば、あなたはどう思うだろうか。ボーカロイド・
【あらすじ・考察】『ハサミ男』平成の産声としての「ハサミ男」
「平成」という時代を1文字で表すとすれば「狂」ではないだろうか。震災や少年少女による殺人、経済の不安定化によるライフステージの崩壊と狂騒。文化も制度も人々の精神も「狂」の文字がチラついた。そのような時代の空気に対して最も鋭敏に反応したのがミステリーであり、殊能将之『ハサミ男』だろう。1999年、第13回メフィスト賞を受賞したこの作品は、 「平成」ミステリーの
【あらすじと感想】『#真相をお話しします』(結城 真一郎)読みやすさと驚きを両立させた傑作ミステリー短編集
謎の館、脱出できない孤島など、周到な伏線や緻密なロジックを積み上げるクラシックなミステリーも面白いけれど、時代を反映させ、問題提起をなすミステリーも同様に強烈に人を惹きつける。本文では結城慎一郎の短編集『#真相をお話しします』を後者と位置づけ、いくつかをピックアップし、その魅力を紹介していきたい。 映画化もされるこの本は、そういった時事的なギミックを好む人や
【要約・考察】『14歳からの社会学』宮台真司を読むなら、まずこの一冊から!
「人が抱えた困難や弱さに寄り添わないなんて、ひどい人だ」。宮台真司という社会学者が一般向けに書いた本を読んで、私はそんなことを思ったことがある。自己責任論の嵐が吹き荒れる時代に、傷つくことを肯定し、タフに生きることを奨励しているように読めたからだ。けど本書『14歳からの社会学』を読むことで、宮台真司に対する大きな誤解が解けた。「ひどい人だ」と思った頃、私はま
【要約・考察】勅使河原真衣『働くということ』「能力」という呪縛を解きほぐす
「働き方」の改革は、いつ成功するのだろう。今日より素晴らしい明日が来ると信じ、改革という甘い毒を飲み干した私たちに残ったのは、すさまじいプレッシャーと果てない競争によってズタズタになった心と身体だけではないだろうか。私たちは改めて問わなければいけない。「改革」は、なぜ失敗したのか。そして、私たちを惑わせた毒で一体、誰が得をしたのだろうか。勅使河原真衣『働くと
【要約・考察】『ディスタンクシオン』嘲笑と冷笑に抗する社会学
※ 本文は岸政彦『ディスタンクシオン(100分de名著)』を参照しています。 誰かの人生を簡単に嗤うなよ。ゴシップで盛り上がる他者の反応を見るにつけ、そう思う。誰もが誰かの選択を嘲笑し、さながら神様のような立ち位置から、その生い立ちを論評する様子に違和感を覚える。「一生懸命に考えた結果だ」「頭が良かろうが悪かろうが、その人はその人の最善を尽くしたのだ」という