「考察」・「要約」・「名言紹介」
【要約・考察】『14歳からの社会学』宮台真司を読むなら、まずこの一冊から!
「人が抱えた困難や弱さに寄り添わないなんて、ひどい人だ」。宮台真司という社会学者が一般向けに書いた本を読んで、私はそんなことを思ったことがある。自己責任論の嵐が吹き荒れる時代に、傷つくことを肯定し、タフに生きることを奨励しているように読めたからだ。けど本書『14歳からの社会学』を読むことで、宮台真司に対する大きな誤解が解けた。「ひどい人だ」と思った頃、私はま
【要約・考察】勅使河原真衣『働くということ』「能力」という呪縛を解きほぐす
「働き方」の改革は、いつ成功するのだろう。今日より素晴らしい明日が来ると信じ、改革という甘い毒を飲み干した私たちに残ったのは、すさまじいプレッシャーと果てない競争によってズタズタになった心と身体だけではないだろうか。私たちは改めて問わなければいけない。「改革」は、なぜ失敗したのか。そして、私たちを惑わせた毒で一体、誰が得をしたのだろうか。勅使河原真衣『働くと
【要約・考察】『ディスタンクシオン』嘲笑と冷笑に抗する社会学
※ 本文は岸政彦『ディスタンクシオン(100分de名著)』を参照しています。 誰かの人生を簡単に嗤うなよ。ゴシップで盛り上がる他者の反応を見るにつけ、そう思う。誰もが誰かの選択を嘲笑し、さながら神様のような立ち位置から、その生い立ちを論評する様子に違和感を覚える。「一生懸命に考えた結果だ」「頭が良かろうが悪かろうが、その人はその人の最善を尽くしたのだ」という
【要約・考察】『私とは何か「個人」から「分人」へ』 「私」の生き方の処方箋
「本当の自分」を探したことはあるだろうか。思春期の専売特許と思われていたが、今では「大人」も「本当の自分」を探しているはずだ。適切なキャリアや自己啓発書を読むとき、新しい職場を探すとき、そこには「本当の自分」が暗に想定されている。小説家・平野啓一郎の本『私とは何か「個人」から「分人」へ』は、そのような考えに警鐘を鳴らす。本論では『私とは何か』の要約と、 ここ
【要約・考察】『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』メタ・ビジネス書のすすめ
なぜ働いていると本が読めなくなるのか。本書を貫く問いは、タイトルのとおりだ。この本は、そんな問いに対して労働史、特にビジネスマンという階級・階層の揺れ動き、そしてベストセラーなどにみる日本人の読書の歴史という二つの柱の関係性から答えを導き出していく。このページでは、その関係性の歴史を要約すると同時に、本書が導き出した答えに対して、別の視点からの解釈を試みたい
【要約・考察】『バカと無知』(橘玲)私たちは「人間」を知るべきである
ネットでは今日も誰かが燃えているのだろう。そう思ってしまうほどに社会問題の噴出と人々の分断は進んでいる。この現状の原因について、政治的右派は愛国心の欠如、政治的左派は資本家や国家権力による作為的なものと考えているのかもしれない。しかし、そうではないと断言するのが『バカと無知』である。上述の原因が克服されたとして、私たちは争い続ける。なぜか。 「人間」そのもの
【要約・書評】『ネット右翼になった父』大切な人に「ネトウヨかも?」と思ったら読むべき本
「実家に帰ったら両親が「ネット右翼」になっていた」というのは、筆者の周囲でも耳にする話だ。ここでいう「ネット右翼」の定義については諸説あるが、今回参考にしている『ネット右翼になった父』では以下のことを特徴としている。 「①中韓(主に韓国に対しての批判 ②社会的弱者に対する無理解(生活保護・シングルマザー・発達障害関連での発言) ③保守論壇の主張に含まれる「伝
【要約・書評】『職場を腐らせる人たち』「ハラスメント」への処方箋。社会人、必読の書!
「ハラスメント」が横行する昨今、私たちに必要なことは沢山の事例を知ることと個人単位でできる対処法を学ぶことだ。そんな要望に応えるのが精神科医・片田珠美『職場を腐らせる人たち』である。ここでは本書の要約と、この本の分析の限界点について考察していきたい。 『職場を腐らせる人たち』要約 『職場を腐らせる人たち』は大きく三つに分けることができる。第一章は著者自身の診
【要約・考察】『日本人の法意識』ブラック企業の温床? 日本にとって「法」とは何か。
過労死やパワハラ・セクハラ、様々な偽装などのニュースを見るにつけ、最悪の事態になるまでどうして「法律」は対処できないのかと思わずにはいられない。この問題について、日本人の「法意識」という点から回答を導きだせるのが、法社会学の古典にして名著、川島武宣『日本人の法意識』だ。本論では、この本の簡単な要約と、上述した問題への解答となりうる箇所について紹介したいと思う
【要約・書評】『人新世の「資本論」』2021年新書大賞作。いざ、21世紀のマルクスへ!
手元にある『資本論』の帯文には「危機のたびに甦るこの難解さ、この面白さ!」とある。そして実際に蘇った。それこそが経済思想家の斎藤幸平『人新世の「資本論」』である。本論では二〇二一年の新書大賞を受賞した『人新世の「資本論」』の要約と、本書が抱える困難について、最近発売された橘玲『テクノ・リバタリアン』と照らし合わせながら考察を加える。 『人新世の「資本論」』の
【要約・考察】『日本の思想』「日本」という国を幻惑する「思想」とは何か
あえて挑発的なことを言えば「日本」という国、あるいは社会を知りたければ、まずはこの一冊からだろう。それが名著にして日本論の古典、政治学者・丸山真男の著書『日本の思想』である。「日本の思想」「近代日本の思想と文学」「思想のあり方について」「「である」ことと「する」こと」の四章で構成されている本書を、簡潔に要約することは筆者の手に余ることは正直に告白しなければな
【要約・考察】『テクノ・リバタリアン』新時代からの誘惑と挑発
「革命のような「大きな物語」の幻想がすべて潰えたいま、テクノ・リバタリアニズムが「世界を変える唯一の思想」になった」。こう宣言するのは作家・橘玲の本『テクノ・テクノ・リバタリアン』だ。「テクノ・リバタリアン」とは「自由を重視する功利主義者のうち、きわめて高い論理・数学的能力をもつ者たち」とされている。その代表的な人物を「イーロン・マスク」「ピータ・ティール」
【要約・考察】『ブルシット・ジョブの謎』クソどうでもいい仕事の謎と罠
「仕事のための仕事」「会議のための事前打ち合わせ」「ブレストという名の愚痴大会」。これら亡霊のような仕事があなたの周りにもないだろうか。内心では「どうでもいい」「なんの意味がある」と誰もが思っているはずなのに、どこからか発生する謎の仕事。この答えを明かしてくれるのが講談社現代新書から発売されている『ブルシット・ジョブの謎』という本だ。本書は「ブルシット・ジョ
【要約・考察】『生きづらい明治社会』「生きづらさ」の理由は性格か、社会構造か。
「生きづらさ」を覚える原因というのは往々にして当人の性格によるものだと思われがちだ。ましてや便利な言葉が増える現代において、「生きづらさ」ものに心理的な病名が付きがちだというのは多くの人が感じているところだろう。だが「生きづらさ」=本人の気質という図式は真実なのだろうか。 僕らを取り巻く仕事や社会規範、経済だって「生きづらさ」を生んでいるのではないだろうか
【要約・考察】『友だち幻想』「友だち」でいることが辛い人たちへの励ましの一冊
菅野仁の『友だち幻想』を十代の頃に読んでいたら、きっと泣いていたと思う。「「友だち」と一緒にいるのに辛いなんて、きっと自分はおかしいんだ」と思っていたから、 この本に宿る「大丈夫、変じゃないよ」というメッセージに励まれたはずだ 。本論では、そんな素敵な本『友だち幻想』の要約と考察を述べていきたい。 『友だち幻想』の要約と「励まし」 本書の構成は大きく四つに分
【要約・考察】『社会学入門』ようこそ、「関係としての人間の学」の社会学へ!
「自分にとってほんとうに大切である問題、その問題と格闘するために全青春をかけても悔いないと思える問題を手放すことなく、どこまでも追及しつづけることの中に、社会学を学ぶ、社会学を生きるということの<至福>はあります」。これは社会学者・見田宗介『社会学入門』の冒頭の文章だ。本書は「入門」であるものの、「社会学」の入門ではなく、前述した「社会学を生きること」、「ど
【要約・考察】「客観的」は本当に良いことなのか?
自分の悩みを相談したとき「そんなの、みんな同じだよ」という回答にモヤモヤを抱いてしまうのは私だけだろうか。適当に頷くものの、内心では「いや「みんな」なんてどうでもいい。苦しいのは、この「私」なんだ」と毒づいてしまう。この「みんな同じ」という回答は「客観的にみて、君の悩みは「悩み」とは言えない」と言われている気分になるのだ。だが昨今では「客観」が万能の道具のよ
【要約・感想】國分功一郎『はじめてのスピノザ』スピノザが問いかける自由の本質とは
國分功一郎の『はじめてのスピノザ』は、17世紀の哲学者スピノザの思想を、現代の重要な視点からわかりやすく解説している。閉塞感が漂う現代において、私たちは一般的に持つ「引き受け」や「自由」の概念を再構築し、別の世界の在り様を思考すべきなのではないだろうか。本書はスピノザの哲学を通して、そのための視座を与えてくれる。 要約 第一章:「組み合わせとしての善悪」 ま
『意識と自己』(講談社学術文庫/アントニオ・ダマシオ)
人々が抱いている世界観を一新する本が存在する 。例えば進化生物学者リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』やマーヴィン・ミンスキー『心の社会』などがそうだろう。そしてこれから紹介するアントニオ・ダマシオ『意識と自己』もそのようなうちの一冊に並べられるべきだと私は思う。 ところで私たちは「感情」や「意識」と言ったものについて、どのようなイメージを抱いているだろ
【解説試論】『何もしない』 –「なにもしない」をするために本当に必要なこと–
何もしない休日を過ごすと罪悪感を抱いてしまう。なんとなく眺めるSNSには、資格勉強に励んだり、「丁寧な暮らし」を思わせる写真がアップロードされている。そういうのを目にすると、何もしない自分がひどく恥ずかしくなるのだ。日々の生活のなかで「何もしない時間を作るぞ」「今日という一日だけは何もしないぞ」と思っても、その選択がそもそも間違いだったような気がしてくる。だ
【要約・考察】『実況中継・社会学』
これから紹介する『実況中継・社会学』という本は冒頭で次のように書いている。「それがいまやテレビで「時事批評」する人たちだれもかれもが自称・他称にかかわらず社会学者と呼ばれ(…)ググってみたところ、経歴的にも議論の構成に関しても社会学とはまったく縁のないかたであることがわかり、びっくりしたことがありました」。このように「社会学者」の乱発があるせいだろうか。一部
【要約・考察】『訂正する力』(著:東浩紀)からの言葉
自己啓発より穏やかで、哲学書よりも柔らかい。本書はそんな本である。それは人間の曖昧さと情けなさを許してくれるということだ。「ミス」に厳しい現代、この本は 私たちの優柔不断な心のお守りのようなものだ と思った。 ところで、私たちは自分の人生をどう評価できるだろうか。夢を抱いて、そこに向けて火の玉のように突き進む。そのような「完璧」とも「理想的」ともいえる人生を
【要約・考察】新書『〈私〉を取り戻す哲学』著:岩内 章太郎
SNSが普及した現代において〈私〉というものへのイメージは簡単に操作できる一方で、そのことが「途轍もない疲労感を生んでもいる」と本書は主張しています。それはSNSなどにより「みんなに追いていかれたくない、という漠然とした同調意識に支配されて、自分が何を欲しているのかを深く考えなくなっているから」だと。この結果として「情報に意味を与える〈私〉がいない」言い換え
経済学者・熊沢誠の言葉
「心理的安全性」「ウィルビーイング」という言葉が経営や職場の環境改善という文脈で登場するようになった。その背景には、 労働環境の悪化や止まらぬ能力開発・自己啓発による働き手の「燃え尽き」などがあることは容易に想像ができる 。このような現状に対する分析、そして本文のサムネイルで紹介した「仕事・なかま関係を大切にすることを労働者の「心の自治」」というようなアイデ
【要約・考察】『現代社会はどこに向かうか』から「幸せ」を考える。
アニメ映画『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞アニメ映画賞を受賞した。しかし、考えてみると日本を代表する映画監督が現代に放った作品のタイトルが「どう生きるか」というのは意味深な出来事でもある。つい先日、日本のGDPがドイツに抜かれたということも騒ぎになったが、いよいよもって「経済」という明快な「幸せ」の基準が揺らぎ、「幸せ」を再考すべきというサインであり「
【要約・考察】『人間はどこまで家畜か』現代への「疑念」を提示する渾身の一冊
世界や社会に対する個人の姿勢を分類するのであれば「肯定」「否定」の間に「静観」「懐疑」があると思う。 そして本書は「懐疑」の本である 。本書は「自己家畜化」というキーワードを武器に「ADHD」や「社交不安症」の増加の謎にメスを入れ、その背景にある「生物」としての人間、そして社会構造の変化を分析する。もし今、本論の読者が「健康志向」の風潮や「コスパの良い人生」
【要約・考察】『世界は経営でできている』人生の経営者になるための必読本
告白すれば「経営学」について私は良いイメージがなかった。冷徹な合理主義、搾取のノウハウの蓄積という印象が先行しているからだ。しかし本書は違う。「本来の経営は失われ、その代わりに、他者を出し抜き、だまし、利用し、搾取する、刹那的で、利己主義の、俗悪な何かが世に蔓延っている」と宣言する。この本が語る「経営」とは他者と自分を同時に幸せにするという「価値創造」だ。し
【コラム】ド文系が結城浩の『数学ガール』を読んでみた
「数学が出来たらカッコイイな」と思ったことはないだろうか。そんな衝動を持ったまま手に取ったのが結城浩の『数学ガール』という本だ。とはいえ、タイトルのとおりド文系である自分がきちんと読めるかは自信がなかったし、読了した今でも十全に理解できるとは思っていない。ただ、それでも、楽しい読書体験だったということは、ぜひ共有したいのだ。これこそが本文の結論だけれど、 そ
【要約・感想】『非モテの品格』男らしさの呪縛を解く優しさが宿る魂の一冊
言葉にならない不安や絶望、それらを誰かに伝えるため、人文の世界は存在する。杉田俊介『非モテの品格』という本は、そんな試みの本だと思う。本書は三章で構成されており、一章は男にとっての「弱さ」という問題提起を行う。第二章は男にとっての「弱さ」という角度から恋愛や性愛の問題に取り掛かる。そこでは、この問題を「個人の運不運や自助努力の問題としてのみ考えずに、社会や制
【要約・感想】『メンタル脳』「やりすぎ」な脳との幸福な付き合い方
不安という感情や記憶、あるいはそもそも心というものが、なんのために存在するのか。そんな考えたことないような疑問に「脳」の仕組みという視点から答え、 それを踏まえた上で良質なライフハックを私たちに提供してくれるのがアンデシュ・ハンセン『メンタル脳』だ 。十代向けに書かれたという本書の構成は実にシンプルであり、内容としても二十代、三十代、あるいはそれ以上の年代に
【要約・考察】『現代思想入門』人生のリアリティを味わう哲学
優れた入門書は、優れた地図でもある 。千葉雅也の『現代思想入門』はそのような優れた地図になる一冊だ。しかし、この地図には謎がある。この地図は一体、どういう目的で書かれたのか。仮に「現代思想を知りたいから」という読者側の答えが明白だとしても、「入門書」というジャンル自体が膨大な数であることから、この本の意義は単なる「入門」以外にもある気がしてならない。素朴に考
【要約・考察】『宮本常一 歴史は庶民がつくる』「庶民」の発見と警告の一冊
「進歩とは何か、発展とは何か、進歩という名のものと、私たちはじつにたくさんのものを切り捨ててきた」。『宮本常一 歴史は庶民がつくる』にはそんな一文がある。本書は民俗学者・宮本常一の思想を、時代背景や彼の仕事からたどっていく本だ。宮本は、戦後まもなくの「村」や「集落」を渡り歩き、そこに生きる人々の文化や生活などの「生の声」を生活史として収集、編纂していた民俗学
【オススメ本の紹介】「自分らしさ」で悩む君が読むべき3冊
様々な場面で「自分らしさ」が問われる時代だ。もしこれを学生が読んでいるのであれば、色々と思い当たる節があると思う。進路や将来の夢は言うまでもないし、SNSで輝かしい道を歩んでいる同世代の姿を見ては「自分に何ができるだろう」と焦燥感に駆られている人も少なくないのではないだろうか。 残念なことに、この悩みは大人になっても尽きることはない。「働き方」さえ、その気に